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2014.10.09

慢性副鼻腔炎とアレルギー、マクロライド療法

 松根彰志

 

はじめに

1990年代鼻科学、慢性鼻副鼻腔炎の治療の分野では2つの大きな進歩がありました。1つは、外科治療における

内視鏡下鼻内副鼻腔手術の全国への普及であり、2つめはマクロライド(少量長期投与)療法の有効性が確認、確立されたことでした。さらに、病態理解の点では、上下気道の慢性炎症性疾患をUnited Airway Diseaseとして関連づけて理解し治療する考え方が定着してきました。最も古典的なものとしては、下気道のびまん性汎細気管支炎を

含む慢性閉塞性炎症と慢性副鼻腔炎の合併例が挙げられ「副鼻腔気管支症候群」と呼ばれたものが古くからありました。この概念には気管支喘息は含まれず、マクロライド療法が有効です。一方で、アレルギー性鼻炎やアトピー型

喘息の合併と関連した「アレルギー性(鼻)副鼻腔炎」、更にはアスピリン喘息を含む非アトピー型喘息を高頻度に合併する、難治性・易再発性好酸球性炎症である「好酸球性(鼻)副鼻腔炎」があります。(図1)

 

 

 図1

 

  Ⅰ アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎 -マクロライド療法の出番は?―

 

 アレルギー性鼻炎における(CTや単純レントゲン検査での)副鼻腔陰影の出現は、かつて熊本大学(当時)の

石川 哮先生らが(狭義の)アレルギー性副鼻腔炎という疾患概念で提唱されました。ここでは、副鼻腔粘膜が

(Ⅰ型)アレルギー性炎症のターゲットとなりうることが詳細に証明されています。臨床所見として鼻汁は原則、

水様性鼻汁です。しかし、臨床現場でみられる(広義の)アレルギー性(鼻)副鼻腔炎は、アレルギー性鼻炎の関与した副鼻腔陰影の出現であり、アレルギー性炎症をベースとした感染の反復がみられます。その結果、水様性鼻汁ではなく粘膿性鼻汁を呈することも少なくありません。これには、鼻粘膜腫脹による副鼻腔自然口の閉塞、副鼻腔の換気、排泄障害による2次性の副鼻腔陰影の出現も見られると考えられます。(図2)ここでは、低酸素環境、炎症性サイトカインや細菌エンドトキシンの貯留などが見られ、炎症性サイトカインとして血管内皮細胞増殖因子も重要性な役割をはたしています。診療方針としては、アレルギー性鼻炎の診断と治療が最も重要です。特に画像診断で粘膜肥厚、ポリープ型を示す例では鼻症状の制御にはこの考え方で十分であると思います。しかし、びまん性陰影を示す例では、マクロライド療法の併用は有用であると考えています。

 

 

図2

 

 

 

 Ⅱ 菌体成分に対する特異抗体の産生と好酸球性副鼻腔

  鼻副鼻腔粘膜局所での抗原特異的抗体産生が、鼻副鼻腔炎の病態の理解に重要と考えています。Local allergic rhinitis (LAR)では、全身的(採血や皮内テスト結果)アトピー反応が陰性ですが、鼻腔洗浄液中の特異的IgE産生や抗原誘発試験で陽性でアレルギー性鼻炎症状を呈することがあることを知っておくことが大切です。治療はもちろんアレルギー性鼻炎の治療です。内服薬は不要で鼻噴霧用ステロイドのみで十分かもしれません。

 好酸球性副鼻腔炎の特徴的臨床症状はすでに示されており、診断基準に関する議論も収束の方向に向かっています。(福井大学、藤枝重治先生らのJESREC studyを参照)治療は、内視鏡下鼻内副鼻腔手術による炎症巣の減量、除去とステロイド療法が2本柱となっています。現在これにかわる頼れる有効な治療法と言いましてもなかなか難しいというのが実情で、評価に関する議論も様々です。病態論として黄色ブドウ球菌(ブ菌)のエンテロトキシン、真菌の関与などが議論されています。当科での手術症例に基づいた検討では、ブ菌エンテロトキシンに対する特異的IgE抗体が篩骨洞粘膜で産生されており、同部位での総IgEと相関していました。また、篩骨洞粘膜、血液中ともに真菌に対する特異的IgEのレベルは低いものでした。篩骨洞粘膜でのブ菌エンテロトキシンに対するIgE産生が病態に関与している可能性がありますが、これがはたしてスーパー抗原として働いているかについてはさらに検討が必要です。私たちは、病態研究の対象として、鼻茸そのものよりも最も鼻茸発生の母地となりやすい篩骨洞粘膜の炎症状態について検討すべきと考えてこうした研究をしています。ところで、好酸球性炎症の機序については、違った角度からの検討が必要で、われわれはカンジダに対する遅延型皮内反応の陽性率が高いことに注目しています。今後、まだまだいろいろ調べていく必要がありそうです。

 

 

以上の内容は、以下の講演でお話しした内容に基づいて作成しました。

 

1.平成26年7月19日(土)

第12回 京阪神耳鼻咽喉科臨床懇話会 (大阪府 大阪市)

「感染・アレルギーと鼻副鼻腔炎の病態・治療」

 

2.平成26年9月4日(木)(長崎県 諫早市)

第95回 県央耳鼻科医会

「副鼻腔炎の診断と治療に関する最近の話題」

 

 

 

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