CONTENTS

コンテンツ

難病指定「難治性鼻副鼻腔炎(ちくのう症)」の症状や治療法について、松根彰志先生がやさしく解説!

 

鼻づまりや鼻水、頭の重い感じといった症状の原因になる鼻の病気といえば、鼻炎ちくのう症です。これらは、けっして風邪ではありません。

中でも最近題になっているのが、「難治性の副鼻腔炎(ちくのう症)」です。

ここでは「難治性鼻副鼻腔炎」がどのような病気なのか、今どのような治療がなされているのか、最新の情報を元に、NPO法人「花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会」副理事長の松根彰志先生がわかりやすく説明します。

 

難治性副鼻腔炎とは

 

ちくのう症は医学的な正式名称としては副鼻腔炎と呼ばれています。

副鼻腔炎になると、ドロドロした痰(たん)や鼻水、頭重や頭痛、鼻茸による鼻づまりに日々、一日中悩まされることになります。イライラや集中力の低下にもつながりし、鼻での息がうまくできず口呼吸になり、睡眠障害の原因にもなります。さらに、ニオイをかぐ力が弱くなってきて味までよくわからなくなったりします。

副鼻腔炎の中でも、難治性の副鼻腔炎は、従来の副鼻腔炎とちがって喘息を合併しやすく、手術をしていったんきれいにしても非常に再発しやすい特徴がありあます。国もこの病気については、好酸球性副鼻腔炎という名前を使って、普通の副鼻腔炎とは区別して、「難病指定」としています。

 

難治性副鼻腔炎の特徴

 

耳、鼻、気管などの気道系に起こる難治性の病気は、相互に関連しながら増悪化する傾向があります。これが起こると花粉症の水っ鼻とは異なる、ドロドロした鼻水が鼻から気管に流れてくるようになります。

難治性副鼻腔炎の特徴には、一般的な副鼻腔炎の症状に加えて、以下のようなものがありますが、中でも、喘息を合併する確率が高いことです。時にはガンコな中耳炎をが合併することもあります。現在、有効的な治療法には、ステロイド薬を内服することと手術を併用すること以外にありません。

また、難治性副鼻腔炎は大人がかかる病気で、子どもに発症することはほどんどありません。喘息も小児喘息ではなく、成人喘息です

 

(難治性副鼻腔炎の特徴)
  • 片方ではなく両側性
  • 多発性の両側鼻茸(はなたけ)
  • 難治性で再発しやすい
  • 嗅覚低下が重症で治りにくい
  • 喘息を合併することが多い
  • 中耳炎の合併もある
  • 手術とステロイド薬内服で治療

 

赤い字の項目が難治性副鼻腔炎(好酸球副鼻腔炎)の特徴

2015年に難病指定

 

難治性副鼻腔炎は2000年になった頃に初めて注目されました。そして2015年になって診断基準と重症、中等症、軽症という重症度評価が決まりました。

これらができたことによって、この病気は一般的なちくのう症とは異なると認定され、難病指定を受けることができるようになりました。難病指定を受けることによって診療費など経済的な面で公的なサポートを受けられます。

 

難治性副鼻腔炎の治療法

 

難治性副鼻腔炎の治療には、手術とステロイドの内服による治療を行います。

鼻の中に鼻茸(はなたけ)がぱんぱんにできている場合には薬だけでは治りません。手術が必要です。その手術の前後にステロイド薬を内服します。

鼻の手術というと、顔を切るようなものを想像をする方もいますが、現在の手術は内視鏡手術なので顔を切ることは一切ありません。ただし全身麻酔が必要なため入院が必要です。

治療は保険診療が可能で、検査の結果によっては難病指定の申請をすることもできます。

 

定期的な通院を

 

手術やステロイド内服で鼻の調子が良くなっても、術後は長期にわたって定期的な外来診察が必要です。

年に数回定期的に外来に通院して、鼻の状態をチェックします。もし鼻に炎症が見られればステロイドを適宜投与して早めに治してください。この病気の特徴は治ったかなと思ってもすぐに再発することです。病院とは長い付き合いになると覚悟して根気強く治療を継続してください。

また、鼻の手術が無事に済んだら、次は合併率の高い成人喘息の専門医に診てもらい、症状が再発しないようにしてください。

 

♦松根彰志先生のプロフィール

松根彰志先生

  • 大阪府大阪市出身
  • 1984年 鹿児島大学医学部医学科 卒業
  • 1988年 鹿児島大学大学院医学研究科 博士課程 修了
  • 1988年~1990年米国ピッツバーグ大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 留学
  • 2000年 鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教授 (2007年より大学院准教授)
  • 2011年~日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科 部長(臨床教授)
  • 2015年~日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授