日本医科大学 松根彰志教授は、鼻水や鼻づまりなどの鼻炎は、症状や原因の違いで大きく3つのグループに分けられると言います。
それぞれのグループごとに適した治療法があるため、間違った治療を続けていると、治らないばかりか悪化しかねません。
ここでは、松根彰志先生監修の簡単!鼻炎の種類を見分けるセルフチェック法(自己診断)をご紹介し、鼻炎の3つのグループについて解説します。
鼻炎を見分けるセルフチェックとは?
副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、風邪(その他の鼻炎)を見分けるためのチェックシートをご紹介します。
あなたの鼻の症状がどのグループにあたるのか、簡単に見分けることができます。
やり方
以下の項目のうち、それぞれが4個以下であれば風邪と考えてもいいでしょう。5個以上あれば風邪ではなく、副鼻腔炎または花粉症などのアレルギー性鼻炎の可能性が大です。
副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎はどちらか片方だけではなく、合併して起こることがあるので、ご注意ください。
副鼻腔炎 (ちくのう症)編
- □色のついた粘性の鼻水がでる。
- □色のついた粘性の痰や咳がでる。
- □発熱はほとんどない。
- □頭痛、頭重が持続してある。
- □おでこや眼周囲、片側頬の重みや痛みがある。
- □においがしない、わかりにくい。
- □時間帯や季節に関係なく鼻症状が続く。
花粉症・アレルギー性鼻炎編
- □くしゃみ、みず鼻、鼻づまりが、季節限定でまたは1年中ある。
- □目のかゆみ、のどのイガイガが季節限定でまたは1年中ある。
- □朝にくしゃみやみず鼻などの症状が強く連続して出る。
- □夜に鼻づまりが強くなり、寝つきが悪くなったり夜中に目が覚める。
- □熱は出ないか、出てもせいぜい37℃前後までである。
- □顔や露出部の皮膚が季節限定でかゆくなる。
- □親や兄弟が花粉症・アレルギー性鼻炎である。
- □気管支喘息やアトピー性皮膚炎の既往、治療歴がある。
*季節限定なら花粉症、1年中の場合はハウスダストやダニが原因かもしれません。
鼻炎の3つのグループとは
鼻水や鼻づまりなどの鼻炎は3つのグループに分けることができます。通常ちくのう症とよばれる副鼻腔炎、花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎、ウイルス性鼻炎などのその他の鼻炎の3つです。
- 副鼻腔炎
- アレルギー性鼻炎(花粉症、ハウスダストアレルギー)
- その他
副鼻腔炎とは
副鼻腔の粘膜に炎症が起こっている状態を副鼻腔炎といい、一般にはちくのう症と呼ばれています。
副鼻腔の粘膜が炎症で腫れてふさがると、中の分泌物を排泄することができず、副鼻腔内に膿(うみ)、いわゆる”ちくのう”がたまります。膿はドロドロとした鼻水で出てきたり、鼻の後ろに落ちることがあります。後ろに落ちることを後鼻漏(こうびろう)といい、”たん”と呼んでいるものです。
副鼻腔炎の鼻水やたんは、季節や時間に関係なくいつでも起こります。
症状が慢性化すると、副鼻腔に鼻たけという腫れが戻らなくなったモノができ、嗅覚障害や重篤な鼻づまりの原因になります。そして、頭痛、頭が重い、咳が出るなどの症状が続きます。
顔の骨の中には、目の間や頬、おでこの奥に左右四対(8個)の空洞(前頭洞・篩骨洞・上顎洞・蝶形骨洞)があります。これを「副鼻腔」といいます。副鼻腔の内部は粘膜で覆われて小さな自然口で鼻腔とつながっており、副鼻腔内の分泌物はこの自然口を通じて交換・排泄されています。
アレルギー性鼻炎とは
鼻炎の中でも最も有名なのが、スギ花粉が原因(抗原という)となって鼻の粘膜で炎症が起こる花粉症です。花粉症は季節限定のアレルギー性鼻炎ですが、ホコリ(ハウスダスト)中のダニが原因で通年でおこる通年性アレルギー性鼻炎もあります。
アレルギー性鼻炎は、花粉やダニなどの原因物質を排除しようとする過剰な防御反応(アレルギー反応という)として、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が起こります。
アレルギー性鼻炎の鼻水はちくのう症のようなドロドロではなく、水のようなサラサラの”水っぱな”です。
朝や夕方の気温が大きく変化する時間帯、季節の変わり目、暑い所と寒い場所の移動時に症状が出やすいのが特徴です。
目のかゆみ、咳、かゆみ、イガイガなどの違和感が出ることもあります。
- 花粉:スギ、ヒノキ、シラカバ、コナラ、イネ科、ブタクサ、ヨモギなど
- 室内:ダニ・ホコリ、カビ、ペット、昆虫など
その他の鼻炎について
その他の鼻炎で代表的なものは、風邪を含むウイルス感染が原因の鼻炎です。新型コロナ以前からあるコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、 パラインフルエンザウイルス、エンテロウイルスなどです。
ウイルス以外にも煙などの刺激物質が原因になることがあります。
まとめ
鼻炎には3つのグループがあり、それぞれに適合する治療を行わないと、治らないどころか症状が悪化することがあります。セルフチェックを行ったら、早期に医師にきちんと診断をしてもらい、正しい治療を受けることをおすすめします。
♦松根彰志先生のプロフィール
日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の研究をし、慢性的副鼻腔炎の外科手術を得意とする医師。日本医科大学武蔵小杉病院耳鼻咽喉科部長も務める。
- 大阪府大阪市出身
- 1984年 鹿児島大学医学部医学科 卒業
- 1988年 鹿児島大学大学院医学研究科 博士課程 修了
- 1988年~1990年米国ピッツバーグ大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 留学
- 2000年 鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教授 (2007年より大学院准教授)
- 2011年~日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科 部長(臨床教授)
- 2015年~日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授