TOPICS

トピックス

第4回 アレルギー週間「花粉症市民講座」 開催レポート(2017年2月5日開催)

第4回 NPO花粉症市民講座

総合司会 松根彰志 (NPO事務局長)
司会 宮本 昭正 (公益財団法人 日本アレルギー協会 理事長)
演題 「花粉症治療の最前線」 演者 大久保公裕 (NPO 理事長)

 

 

 

講座内容ダイジェスト

(1)「花粉症、アレルギー性鼻炎とは」

日本におけるスギ林の面積は全国の森林の18%、国土の12%を占めています。このためか花粉症の患者さんの約70%はスギ花粉が原因で、2008年の調査では人口の26.2%という有病率が示されています。

人体にとって異物であるスギ花粉抗原が体内にはいると、まず異物を認識するマクロファージという細胞と出会います。このマクロファージが得た異物に対する情報がリンパ球の1種類であるT細胞に送られます。このマクロファージのHLAという異物排除を選択する因子とスギ花粉の情報、そしてT細胞が結びつき一つの複合体を形成します。複合体が形成されるとT細胞が花粉抗原の情報を同じリンパ球のB細胞へ送り、花粉抗原と反応するIgE抗体が作られます。しかし、この一連の流れで作られたIgE抗体と抗原が反応することにより身体にとって有害な状態が生じます。これがアレルギー反応です。

 

スギ花粉症はこのように異物である花粉から体を守ろうとするため、くしゃみで吹き飛ばす、鼻水で洗い流す、鼻づまりで入れなくするなどの防御で症状が起こっています。眼の症状である、かゆみ、流涙も同様です。このメカニズムはダニ(ハウスダスト)でも同様です。

 

(2)「最新の治療」

花粉症を含むアレルギー性鼻炎の治療は他の鼻や眼のアレルギーの治療と基本的には同じですが、急激に花粉にさらされたために起こる急性の強い症状への配慮も必要となります。治療法を大きく分けると症状を軽減する対症療法と  根本的に治す根治療法の二つがあります。

 

対症療法: 点眼、点鼻薬などによる局所療法
内服薬などによる全身療法
レーザーなどの手術療法

 

根治療法: 原因抗原(花粉、ホコリなど)の除去と回避
アレルゲン免疫療法(減感作療法)

 

薬物療法で最も多く使用される抗ヒスタミン薬は鼻粘膜の上皮のヒスタミン受容体に結合して、アレルギー反応が起って肥満細胞からヒスタミンが出されても症状が出ないようにします。抗ヒスタミン薬は多かれ、少なかれ眠気が出ることがあります。現在の考え方ではやはり第2世代の副作用の少ない薬剤の処方が望まれます。また非常に症状が悪化する場合には花粉飛散季節中の連続的な薬剤使用が望まれます。
これら治療法を上手に使い分ければ約7割の花粉症患者さんが副作用もなく、症状がほとんど出現せず花粉飛散季節を過ごせることが分かっています。

 

アレルゲン免疫療法、特に舌下免疫療法

現在、花粉症の治療としては症状を抑える治療(対症療法)が主流となっていますが、この対症療法では花粉症を治すことはできません。これまでに分かっている花粉症(アレルギー性鼻炎)を治す ことのできる唯一の治療法は、『アレルゲン免疫療法)』という治療法です。これは、アレルギーを引き起こす原因となっている物質(花粉)を、定期的に体内に入れることで、徐々にアレルギー反応の起きない体質に変えていく治療法です。日本でも皮下注射法が認可されていますが、今までの皮下免疫療法では2年以上通院し注射を打たないといけないことや、実施している医療機関が少ないことが理由であまり普及していません。そこで、注射と同じ抗原エキスを舌の下に保持して、口の粘膜から花粉を吸収する方法です。この舌下免疫療法は欧米では既に認められた方法で、自宅でも行うことができることから、皮下注射法に比べ、通院回数が少なく、苦痛の少ない方法として、より普及が期待されています。

 

舌下免疫療法は現在スギ花粉症ではすでに行われ、多くの患者さんが症状の改善を実感しています。また通年性アレルギー性鼻炎のダニ抗原に対してもこの冬から薬剤が発売されました。長期にわたる治療が必要ですが、ダニにおいても症状が軽くなる事が示されています。ただ抗原を実際に家で投与するので、治療法を患者さん自身が良く知っておくことが必要です。

 

花粉症の症状の緩和には手術的治療法も行われます。現在広く行われているのは大別して粘膜凝固術と下鼻甲介粘膜切除術に分けられます。花粉症に対しては主に凝固法が用いられますが、その種類はレーザー、電気凝固、化学剤(トリクロル酢酸)、超音波、アルゴンプラズマなど多くがあり、日帰り手術として行われています。

 

(3)「正しい予防法とケア」

花粉症はアレルギー反応であり、抗原が目や鼻に入らなければ発症もせず、重症化もしないことを理解してください。また薬剤で症状が止まっていても抗原は入ってきており、抗体の持続的な産生増加があります。薬剤で見かけ上、症状がなくなっているのであり、花粉飛散の多いときにはできればマスクや眼鏡の使用を 勧める方が、将来の症状の重症化を防ぐことができます。抗原の回避では以下の点に気をつけましょう。
①花粉情報に気をつける。

②飛散の多い日は外出を控える。窓、戸を閉めておく。
③マスク、眼鏡を使う。④外出から帰宅したら洗眼、うがいをし、鼻をかむなど
*上手に花粉から 逃れられるように先生からのアドバイスも含め、考えて下さい。

 

 

講演の内容は、「花粉と花粉症の科学」展にも展示しています。
*当NPOは、こうした展示会にも参加、協力しています。

企画展「花粉と花粉症の科学」展
期間: 2016年12月23日―2017年3月20日
場所: 国立科学博物館(東京・上野公園)日本館1階 企画展示室
主催:国立科学博物館、花粉問題対策事業者協議会
講演:文部科学省、農林水産省、経済産業省
大好評で、2月19日時点で、入場者10万人越え!!!