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2014.10.23 村山貢司先生の連載コラム_第1回 気象と花粉症

第1回:気象と花粉症

財団法人気象業務支援センター・専任主任技師、気象予報士 村山貢司

 

スギ花粉症の人は年々増加しており、原因として大気汚染や食生活の変化が言われています。

しかし、一番の原因は飛散するスギやヒノキの花粉が多くなったことでしょう。図は全国のスギとヒノキの分布で、スギは全国におよそ450万ha、ヒノキは250万haも植林されています。一時、花粉シーズンに北海道や沖縄に避難のための旅行をするという企画がありましたが、図を見ると北海道の北部まで行かないと花粉から完全に逃れることができません。

 

図1. 日本におけるスギ林の分布  

 

 

 

図2. 日本におけるヒノキ林の分布

 

 

 

気象予報士の立場からスギ花粉の飛散予報を日本で始めてからまもなく30年になります。きっかけはスギ花粉症の発見者である齋藤洋三先生が雑誌「気象」に書かれた花粉症の原稿を読んだことでした。齋藤先生はその中で「詳しいことは分らないが花粉の量や多くなる時期は気象に影響されている」と書かれていました。先生をお尋ねして、気象が影響しているのなら予報ができるのではないかと話すと「観測された花粉のデータを上げるから調べてみなさい」と応援していただきました。花粉のデータを調べてみると、夏が猛暑になると翌年の花粉が多くなり、逆に冷夏の場合は翌年の花粉が少なくなることが分りました。気象のデータの中では夏の日照時間や気温との関係が大きく、この関係から夏が終わると翌年春の花粉数の予測を出せるようになりました。また、花粉がいつごろから飛び始めるかは、1月から2月上旬の気温が大きく影響していることも分り、飛散開始日の予想も可能になりました。現在は、シーズンの花粉の総飛散量、飛散開始日、ピークの時期、終了の時期など様々な花粉に関する予測を出しています。ただ、花粉の飛散開始日は1平方cmあたりの花粉数が連続して1個以上になった最初の日という定義があり、それ以前にまったく花粉が飛ばないというわけではありません。

 

東京都のホームページには毎日の花粉数が掲載されていますが、その中に0.3個、0.6個などの表示があります。花粉を顕微鏡でカウントするときには3.24平方cmのカバーガラスをかけています。この中に花粉が1個あれば1平方cmあたり0.3個に、2個あれば0.6個になるわけです。仮に1平方mに換算すると、飛散開始日とは1平方mあたり1万個の花粉ということになります。0.6個では定義上の飛散開始になりませんが、1平方mに6000個もの花粉が観測されている計算になります。飛散開始日までに花粉症を発症する人は、東京都内ではおよそ15%にもなっています。2015年の花粉数は例年より多くなりそうですから、毎年早い時期に発症する人は、花粉情報で0.3個とか0.6個という数字をみたらすぐに予防対策をとった方がよいでしょう。

 

 

* 村山貢司先生の第2回は、「花粉はどこまで飛ぶのか」(12月)を予定しております。